生活習慣病とは
生活習慣病とは、長年の生活習慣の乱れによって引き起こされる病気の総称です。そして生活習慣の乱れとは、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、過労、喫煙、飲酒、睡眠不足などのことを指します。
「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」といったよく知られた病気に加え、痛風発作の前段階となる「高尿酸血症」も、生活習慣病です。
いずれも初期にはほとんど自覚症状がなく、放置すると動脈硬化を進行させるという点で共通しています。動脈硬化とは全身の血管が脆く硬くなることであり、これに伴い心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります。
つまり生活習慣病は、気づかないうちに進行する一方で、命にかかわる病気のリスクとなるというおそろしさを持っているのです。
症状に気づいたときはもちろんですが、職場・学校・自治体で行われる定期的な健康診断で血圧・血糖・脂質・尿酸などの値の異常を指摘されたときには、まったく症状がなくてもきちんと受診することが大切です。
生活習慣病の種類と
発症率ランキング
生活習慣病は生活習慣の乱れによって引き起こされる病気であり、ときに命にかかわります。
特に、がん・心筋梗塞・脳卒中は、日本人の死因の上位を占めており、これを3大疾患(3大生活習慣病)と呼びます。
3大疾患
- がん
- 心筋梗塞
- 脳卒中
7大生活習慣病
- がん
- 脳卒中
- 心筋梗塞
- 高血圧性疾患
- 糖尿病
- 肝硬変
- 慢性腎不全
発症数の多い生活習慣病
1位 高血圧(6.5%)
2位 糖尿病(2.3%)
3位 脂質異常症(2.1%)
人口あたりの有病率は、高血圧・糖尿病・脂質異常症の3つが飛びぬけています。統計には小児や若者も含まれているため、生活習慣の乱れを起因とする中高年以上の有病率は、さらに高くなります。
高血圧
現在、高血圧のある方は国内で4,000万人以上いると推定されています。しかしそのうち治療を受けている方は、約3分の1と言われています。
高血圧は進行しても自覚症状に乏しく、一方で心筋梗塞や大動脈解離、脳卒中などのリスクを高めます。適切な治療によって血圧をコントロールすることは、命を守ることにつながるのです。
症状
ほとんどの症例において、自覚症状はありません。稀に、以下のような症状を訴える方がおられます。
- 胸痛
- 動悸
- 頭痛、頭の重い感じ
- めまい
- 肩こり
原因
高血圧の原因のうち約90%を占めるのが、生活習慣の乱れです。塩分の摂り過ぎ、喫煙、肥満、運動不足、睡眠不足、ストレスなどが挙げられます。
また、腎臓病、副腎からのホルモン分泌異常、甲状腺機能亢進症、大動脈弁狭窄症、睡眠時無呼吸症候群、薬の副作用などによって起こる二次的な高血圧もあります。
治療方法
生活習慣の改善
治療の基本となるのが生活習慣の改善です。
1日の塩分摂取量を6グラム以下に抑えること、節酒、野菜や果物の摂取などの食事療法と、適度な運動(特に有酸素運動)を取り入れる運動療法を行います。また、禁煙、BMI25以下を目指したダイエットなども有効です。
薬物療法
食事療法・運動療法で十分な効果が得られない場合には、薬物療法を導入します。
まずは作用の軽い降圧剤を使用し、必要に応じて増量や薬の変更などを行います。
糖尿病
糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンが不足する・正しく作用しないことにより、血糖値(血中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなってしまう病気です。
高血糖状態が続くことで、全身の血管がダメージを受け、さまざまな合併症のリスクを高めます。具体的には、心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる疾患、網膜症・腎症・神経障害(3大合併症)といった生活の質を著しく低下させる疾患などが挙げられます。
症状
糖尿病は、初期にはほとんど症状がありません。ある程度進行すると、以下のような症状が見られるようになります。
- のどの渇き、水分の摂り過ぎ
- 頻尿、多尿
- 空腹感が強くなる
- 体重減少
- 倦怠感、疲労感
また、さらに進行すると、以下のような症状が現れます。
- 手の痺れ、皮膚のかゆみ
- 視力低下
- ちょっとした傷が化膿する
原因
Ⅰ型糖尿病
主に自己免疫の異常によって膵臓のβ細胞が破壊されることで、インスリンがほとんどあるいは全く作られなくなります。
Ⅱ型糖尿病
食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレス、遺伝などを原因として、インスリンの作用や分泌が低下します。
治療方法
Ⅰ型糖尿病の場合には、すぐにインスリン療法を導入し、血糖値をコントロールする治療を開始します。
以下、Ⅱ型糖尿病の治療についてご説明します。
生活習慣の改善
食べ過ぎ・飲み過ぎを控えつつ栄養バランスを計算した食事療法、適度な運動(特に有酸素運動)を行う運動療法を組み合わせて、生活習慣の改善を図ります。
薬物療法
生活習慣の改善によって十分な効果が得られなければ、薬物療法を導入します。
主に、血糖値を下げる飲み薬・注射薬などを使用します。また、場合によってはインスリン療法の導入も必要になります。
脂質異常症(高脂血症)
高脂血症とは、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が増えすぎている、あるいはHDLコレステロールが少なすぎる状態を指します。以前は「高脂血症」と呼ばれていました。
進行すると血管が障害され、動脈硬化が進行します。そして高血圧や糖尿病と同じように、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める原因となります。
症状
脂質異常症は、生活習慣病の中でも特に症状に乏しい病気です。初期はもちろん、進行してからも症状はないとお考えください。
重要なのは、健康診断などで数値の異常を指摘されたときに必ず医療機関を受診することです。「数値は悪いけど症状がないから」と放置していると、心筋梗塞や脳卒中など、命にかかわる病気の引き金となります。
原因
食べ過ぎや飲み過ぎ、脂っこいものの摂り過ぎ、運動不足、ストレス、喫煙など、長年の生活習慣の乱れを原因として発症します。
治療方法
生活習慣の改善
食べ過ぎ・飲み過ぎ・脂っこいものの摂り過ぎなどを控えた食事療法と、適度な運動を行う運動療法が柱となります。そして食事療法と運動療法を組み合わせた減量・適切な体重の維持も大切になります。
食事療法においては、和食の割合を増やす、食事を抜かない(3食きちんと摂る)、早食いをしない、よく噛んで食べる、就寝前は食事をしないといったことで、無理なく進めていきましょう。
薬物療法
生活習慣の改善で十分な効果が得られない場合には、薬物療法を導入します。
主に、LDLコレステロールの値を下げる薬、中性脂肪の値を下げる薬などを使用します。
高尿酸血症
高尿酸血症とは、生活習慣の乱れ、そして遺伝的素因が関連して発症する生活習慣病です。血液中の尿酸の濃度が高くなり、結晶が生じることで強烈な痛みを伴う「痛風(発作)」を引き起こします。
症状
高尿酸血症そのものが症状を引き起こすことはありません。しかし高尿酸血症が進行し痛風を引き起こしたときには、足の親指の付け根、くるぶし、膝などに以下のような症状が急激に出現します。
- 強烈な痛み
- 発赤
- 熱感
- 腫れ
痛風に伴うこれらの症状は数日で治まりますが、適切な治療を行わなければ繰り返し発作を起こすようになります。また、関節の変形、痛風結節、腎臓・尿管結石を引き起こすこともあります。
原因
尿酸は、老廃物の一種です。肝臓などでプリン体が分解され、尿酸となります。
生活習慣の乱れや遺伝的素因によって尿酸の産生が増えすぎたり、腎臓からの排泄が少なくなったりすることで尿酸値が高くなり、高尿酸血症を発症します。
治療方法
生活習慣の改善
プリン体を多く含む食品、アルコールの摂取を控える食事療法が中心になります。また、肥満がある場合には運動療法を組み合わせて減量に取り組みます。
薬物療法
尿酸の産生を抑える薬、尿酸の排泄を促す薬などを主に使用します。
痛風を発症した場合には対症療法として非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を使用し、症状が落ち着いてから高尿酸血症の治療へと移行します。