貧血とは?
種類は4タイプ
貧血とは、血液が薄くなっている状態を指します。
全身に酸素を届ける赤血球、赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少することで、倦怠感や息切れ、ふらつきなどのさまざまな症状を引き起こします。
通常、ヘモグロビンの濃度が男性であれば13.0g/dl以下、女性では12.0g/dl以下で貧血と診断されます。
1鉄欠乏性貧血
体内での鉄が不足することで、ヘモグロビンが十分に作られないために発症する貧血です。
貧血全体のほとんどを、この鉄欠乏性貧血が占めています。
2再生不良性貧血
血液を作る「骨髄」の低下機能するために、赤血球が不足して発症する貧血です。
3二次性貧血
腎不全、慢性感染症、膠原病、肝疾患、内分泌疾患、悪性腫瘍などの疾患を原因として、二次的に引き起こされる貧血です。
特にご高齢になってからの貧血は、この二次性貧血の割合が高くなります。
4悪性貧血
進行した萎縮性胃炎によって内因子分泌が欠乏することを原因として発症する貧血です。動悸、耳鳴り、めまい、全身倦怠感、下痢、四肢の知覚異常、歩行困難、視力障碍などの症状も伴います。
「隠れ貧血」かも…?
貧血で現れる症状
貧血が起きると、下記のような症状が起こります。
- 倦怠感
- 耳鳴り
- めまい
- 動悸、息切れ
- 肌の乾燥
(口角が切れる) - イライラ
- 頻脈
- 肩こり
- 抜け毛
症状のセルフチェック
- めまいや立ちくらみが起こることがある
- 顔色が悪くなった気がする
- 原因不明の肩こりがある
- 階段をのぼるだけで息切れする
- 肌が乾燥する、爪が割れやすい
- 寝起きが悪い
- 頭痛持ち
- 休んでも疲労感が抜けない
- 月経量が多い
- 口内炎がよくできる
受診を急ぐ症状
特に受診を急ぐべきなのは、以下のようなケースです。
貧血が重度にまで進行している、腎臓病、がんなどの重い病気であることが考えられます。
- 動悸、息切れが頻繁にある
- めまい、立ちくらみが頻繁にある
- 便に血液が混じっている
貧血が起こる原因・疾患
貧血は、疾患を原因として起こることもあります。症状に気づいたときには、お早めに当院にご相談ください。
胃潰瘍
ピロリ菌感染や薬の副作用などによって、胃粘膜にびらん(ただれ)や潰瘍が生じる病気です。
潰瘍からの出血によって、貧血が起こります。また目に見える症状として、吐血や下血を伴うこともあります。
十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染や薬の副作用によって、十二指腸粘膜でびらんや潰瘍が生じる病気です。
潰瘍からの出血に伴い、貧血を起こします。また吐血・下血を伴うことがあります。
胃がん
貧血を引き起こすことの多いがんです。とはいえ、全体的に症状は乏しく、特に初期はほとんど症状のないまま進行します。がんそのものからの出血、骨髄浸潤によって貧血を招きます。
大腸がん
胃がんと同様、初期にはほとんど症状がありません。しかし進行すると慢性的な出血が続くようになり、貧血を引き起こすことがあります。下痢や便秘、血便、腹痛などの症状も見られます。
子宮筋腫
子宮に生じる良性腫瘍です。進行すると月経痛の悪化、経血量の増加といった症状が現れ、これに伴い貧血が引き起こされます。そのほか、頻尿、排尿時・排便時の痛み、腰痛などの症状を伴います。
慢性腎不全
腎臓の機能が低下すると、赤血球をつくるホルモンが不足し、貧血の原因となります。吐き気や皮膚のかゆみなどの症状を伴うこともあります。
白血病
骨髄の異常によって白血球が増加し、正常な白血球が産生されなくなる病気です。血小板や赤血球の量も減少するため、貧血の原因となることがあります。
貧血が続くとどうなる?
「最近貧血気味で…」といったように、貧血という言葉が日常生活の中でもごく普通に使われるため、どうしても甘く見てしまいます。しかし貧血が続くと、以下のようなことが起こります。決して、放置していていいものではないのです。
心筋梗塞のリスクが高まる
貧血になると、心臓に運ばれる酸素の量が少なくなります。この状態が続くことで、身体が低酸素状態に陥り、全身に血液を送る働きを担う心臓の負担が増加し、心筋梗塞のリスクが高くなります。
記憶力低下のリスクが高まる
貧血になると、脳に運ばれる酸素の量も少なくなります。この状態が続くことで、記憶力の低下など、思考や情報処理の働きを担う機能が障害される可能性が高くなります。
貧血の検査方法
貧血であるかどうかは、血液検査で診断することができます。また貧血の重症度は、ヘモグロビンの値で判定します。
重症度 | ヘモグロビン値 |
---|---|
軽度 | 10~12g/dl |
中度 | 7~9 g/dl |
重度 | 4~6 g/dl |
貧血の治療方法
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、がん、子宮筋腫、腎不全、白血病などを原因とする場合には、それぞれの疾患に応じた治療が最優先されます。
その他、栄養バランスが乱れていることが原因である場合には、鉄分やビタミンをしっかりと摂るなど、食事療法を行います。また必要に応じて、鉄剤やビタミン剤を処方します。症状が改善したからといって途中で食事療法や服用を自己判断で中止しないようにしてください。
よくあるご質問
貧血や立ちくらみが起きたときの対処法はどうすればいいですか?
まず転倒を防ぐため、その場に座る・しゃがむようにしてください。横になれる場合には横になりましょう。その上で、ズボンやベルトを緩め、目を閉じて安静にします。
なお横になれる場合には、クッションや段差などを利用して15~30センチほど足を高くする体勢をとってください(ショック体位)。
貧血を予防できる食事はありますか?
レバー、肉類(赤身)、あさり、マグロなど、鉄分を多く含む食品を毎日の食事に取り入れることをおすすめします。
ビタミンB12や葉酸も意識的に摂取しましょう。
貧血はどれくらいでおさまりますか?
処方された鉄剤、ビタミン剤を服用することで、2週間程度で数値が改善します。ただ、そこでやめてしまうと再度貧血を起こしてしまうことがあるため、症例によって異なりますが、1~3カ月程度は服用が必要です。
またその期間の長さは医師が患者様ごとに指導しますので、自己判断で中止したりせず、しっかりと服用を続けましょう。